砂糖は筋肉の成長に大切らしいよ

先日、何気なくテレビを見ていると砂糖のCMが流れていました。

そのCMでは、妊婦さんが映されていて、「砂糖(ブドウ糖)は筋肉の成長に必要なインスリンの分泌を促進します」みたいな解説がされていました。確かにインスリンの分泌は筋肉の発達に貢献しますよ。だからと言って無理やりインスリンを分泌させるために砂糖を食べる必要はないでしょう。

インスリンは常に分泌されている

基本的なことですが、すい臓からは常にインスリンが分泌されています。インスリンは血糖値を下げる働きをしています。一方、同じくすい臓から分泌されるグルカゴンは血糖値を上げる働きをします。このインスリンとグルカゴンが、常に綱引きをしているから血糖値が一定の範囲内に落ち着いているわけです。

炭水化物(糖質)を摂取すると血糖値が上がりますから、インスリンは通常分泌されている量では足りなくなります。そこで、すい臓はより多くのインスリンを分泌して血糖値を下げようとします。この時、肝臓や筋肉に血糖をグリコーゲンとして貯蔵できる場合は、肝臓や筋肉に血糖が取り込まれます。肝臓や筋肉にグリコーゲンの空き容量がなければ、血糖は脂肪に変えられて脂肪組織に取り込まれます。

また、インスリンは骨格筋や脂肪組織でのタンパク質合成の促進にも関わっています。なので、砂糖を食べてインスリンを多く分泌させれば、骨格筋でのタンパク質合成が促進されるので、砂糖は筋肉の発達に貢献すると考えられます。

しかし、インスリンは常に分泌されているのですから、わざわざ砂糖を食べてドバっと大量にインスリンを分泌させる必要はないでしょう。また、タンパク質を食べても、インスリンの分泌量は若干増えますから、砂糖を食べなければ筋肉が衰えるとは考えにくいんですけどね。ちなに炭水化物とタンパク質を同時摂取した時は、炭水化物だけを摂取した場合よりも多くのインスリンが分泌されます。インスリンが弾切れを起こさないようにするためにも、炭水化物とタンパク質の同時摂取は控えた方が良いでしょう。

妊婦が糖質をたくさん摂取するのは良くないだろう

さて、冒頭で述べた砂糖のCMですが、あれを見ると妊婦さんは積極的に砂糖を食べた方が胎児の成長に良さそうな印象を受けます。

でも、妊婦さんが糖質を多く摂取するべきではないでしょう。と言うのは、妊婦さんはインスリンの効きが悪くなっているからです。このインスリンの効き目が悪くなって血糖値を下げれなくなっている状態をインスリン抵抗性と言います。産科医の宗田哲男先生の著書「ケトン体が人類を救う」では、妊娠すると非妊娠時よりも軽度の糖代謝異常を起こすことが解説されています。

糖代謝異常は、インスリン抵抗性とインスリンの分泌量の低下が問題となります。妊婦さんが発症する妊娠糖尿病はインスリン抵抗性が増大している状態であり、インスリン分泌には問題ありません。むしろ、インスリン分泌量は非妊娠時よりも増加しているそうです。

つまり、妊婦さんの体は、糖質を食べても、それを体内へ取り込むことを拒否しているのです。それなのに砂糖を食べてインスリンの分泌を促進させようとすると、すい臓が疲弊してインスリンの弾切れが起こり本物の糖尿病に移行してしまうのではないでしょうか?

妊婦さんが砂糖を食べても、体から糖質の取り込みを拒否されるのですから、妊婦さんの健康維持と砂糖の摂取とは無縁のはずです。

人間の食性

そもそも、砂糖なんて昔の人は大して食べていないんですから、それが筋肉の発達や妊婦さんの健康に重要な食べ物だとは思えません。砂糖を食べるよりも、肉を食べた方が健康に良いと思いますよ。それが人間の食性なのですから。

「野人エッセイす」の以下の4記事を読めば、人間が肉食だということがよくわかります。

この4部作は名作。一読することをおすすめします。

参考文献