分解した体タンパク質も摂取タンパク質もいったんアミノ酸プールに集められる

タンパク質は、20種類のアミノ酸で作られています。このうち9種類のアミノ酸は、人間が必ず食事から摂取しなければならない必須アミノ酸です。タンパク質は、体作りに欠かせませんから、必須アミノ酸をしっかりと食事から摂取しておく必要があります。

一方、体タンパク質は、体の中で分解されてアミノ酸となり、再び体タンパク質の合成に使われます。つまり、体タンパク質はリサイクル利用されているわけです。しかし、体タンパク質は全てをリサイクルできませんから、リサイクルできなかったタンパク質は食事から補給しなければなりません。

アミノ酸プールに集合

体タンパク質を分解したアミノ酸と食事から摂取したタンパク質を消化分解したアミノ酸は、どのように体内で利用されているのでしょうか?

体タンパク質を分解したアミノ酸と食事から摂取したタンパク質を分解したアミノ酸には区別はありません。どちらも、いったんアミノ酸プールに集められてから、体タンパク質の再合成やエネルギー源として使われます。また、いらなくなったアミノ酸は外に排泄されます。

アミノ酸プールの仕組み

したがって、以下のような見極めは不可能です。

  • 太ももの筋肉は、昼食で食べた鶏もも肉のから揚げで作られた
  • 右手の親指の爪は、豚の腕肉から作られた
  • 顔の皮膚は、豚のツラミで作られた
  • エネルギー利用されたアミノ酸は、味付けに使った調味料に含まれたアミノ酸を原料にした

体タンパク質を分解したアミノ酸も、食事から摂取したアミノ酸も、自分の意思で利用目的を決めることはできません。体が、勝手にアミノ酸を適材適所に配分しているのです。

また、アミノ酸プールの仕組みを知れば、体タンパク質由来のアミノ酸と摂取タンパク質由来のアミノ酸に色を付けることはできないこともわかると思います。

筋肉を分解して糖新生に使う?

さて、糖質制限を批判している人たちが、「糖質を摂取しないと筋肉のタンパク質を分解してブドウ糖に変える糖新生が活発になる」と言うことがあります。糖質制限をしている人でも、このように考えている人は少なくないようです。

この内容が、おかしいことはわかりますよね?

先ほども述べたように体タンパク質由来だろうと摂取タンパク質由来だろうと、アミノ酸は、いったんアミノ酸プールに集合し、ごちゃ混ぜにされてから、体タンパク質の再合成に使われたり、エネルギー利用されたり、ブドウ糖を作り出すための糖新生の材料に使われたりします。

したがって、糖新生に使われたアミノ酸は、筋肉を分解したアミノ酸なのか、その他の細胞を分解したアミノ酸なのか、食事から摂取したアミノ酸なのかわからないのです。

「筋肉のタンパク質を分解したアミノ酸を糖新生に使う」と言っている人は、アミノ酸プールの仕組みを知らないのでしょうね。

1日に必要なタンパク質摂取量

冒頭でも述べましたが、体タンパク質を分解したアミノ酸は、全てをリサイクルできません。アミノ酸がエネルギー利用されたり、排泄されたりするからです。

だから、エネルギー利用されたり、排泄されたりして体から失われたアミノ酸は、食事から補給する必要があります。

川島由起子先生監修の「カラー図解 栄養学の基本がわかる事典」によると、体重が65kgの成人の場合、1日に200グラムの体タンパク質が分解され、そのうち140グラムが再合成に使われるそうです。残り60グラムは、エネルギー利用されたり、排泄されたりして失われるので、この60グラムが食事から摂取しなければならないタンパク質(アミノ酸)となります。

ざっくり、体重に1グラムを乗じた数値が、1日に最低でも食べなければならないタンパク質量と計算できますね。

ただ、食品に含まれるタンパク質(アミノ酸)は、全てが同質ではありません。人間の体組成に近いアミノ酸が含まれている食品もあれば、そうでない食品もあります。

タンパク質の良質度を表す指標にアミノ酸スコアプロテインスコアがあります。アミノ酸スコアだと100点満点になる食品が多いのですが、プロテインスコアだと100点満点は卵とシジミだけです。プロテインスコアの方が厳しめにタンパク質を評価をしていますから、こちらの方が信頼度が高いと思います。

摂取量が同じでも、食品によってタンパク質の良質度は違います。大まかに言えば、動物性タンパク質は良質、植物性タンパク質は粗悪となりますから、タンパク質は卵、肉、魚介類などを中心に摂取しましょう。

参考文献