ビタミンとミネラルの欠乏症と過剰症

ビタミンやミネラルは、人間が生きていくために必要な栄養素です。だから、食事から必要な量を摂取しなければ欠乏症になります。

一方で、ビタミンやミネラルは、摂りすぎると過剰症になることがあります。

ビタミンとミネラルの欠乏症を防ぐためには推定必要量や推奨量を摂ること、逆に過剰症を防ぐためには耐容上限量を超えないように摂取することが大切です。

今回は、ビタミンとミネラルの欠乏症と過剰症をまとめておきます。

ビタミンの欠乏症と過剰症

まずは、ビタミンの欠乏症と過剰症から。参考にしたのは、川島由起子先生監修の「カラー図解 栄養学の基本がわかる事典」です。

ビタミン 欠乏症 過剰症
A 夜盲症、角膜乾燥症、粘膜抵抗性の減少による細菌感染症、胎児異常 脳圧亢進による頭痛、吐き気、脱毛、筋肉痛、皮膚の落屑
D 小児のくる病・成長障害、成人の骨軟化症、骨粗しょう症 高カルシウム血症(食欲不振)、腎障害、異所性石灰化
E 未熟児では溶血性貧血、脂質過酸化、神経・筋肉症状 過剰症は認められていない。ただし、マウスの実験で骨粗しょう症の報告あり。
K 新生児メレナ(消化管出血)、突発性乳児ビタミンK欠乏症(頭蓋内出血)、出血傾向、血液凝固の遅延 溶血性貧血、高ビリルビン血症
B₁ 脚気(全身倦怠感、下肢しびれ感、腱反射消失、浮腫、動悸、息切れ、)、ウェルニッケ脳症(眼球運動麻痺、歩行運動失調)、慢性疲労、疲労症状(肩こり、食欲不振、倦怠感) 過剰症は認められていない。
B₂ 口内炎、口角炎、口辱の発赤、脂漏性皮膚炎、脱毛症など皮膚粘膜疾患、成長障害、眼膜炎 過剰症は認められていない。
ナイアシン ペラグラ症(皮膚炎、神経障害、不安症)、舌炎症 皮膚発赤、嘔吐、下痢、消化管・肝臓障害
B₆ 脂漏性皮膚炎、湿疹、舌炎、口角炎、小赤血球性貧血 末梢感覚神経障害、日光浴で皮膚紅潮
B₁₂ 悪性貧血(巨赤芽球性貧血)、高ホモシステイン尿症、高ホモシステイン血症、睡眠障害、知覚障害、食欲不振、倦怠感、メチルマロン酸血症 過剰症は認められていない。
葉酸 巨赤芽球性貧血、口内炎、肌の炎症、高ホモシステイン血症、胎児の神経管閉鎖障害、 過剰症は認められていない。ただし、大量摂取で発熱、じんましんなどの葉酸過敏症を起こす場合あり。
パントテン酸 体重減少、皮膚炎、脱毛、血圧低下、免疫力やストレス耐性の低下、動脈硬化、成長障害 過剰症は認められていない。
ビオチン 皮膚炎、脱毛、粘膜の炎症、筋肉痛、倦怠感、疲労感、神経障害(不眠、味覚異常)、インスリン分泌不足 過剰症は認められていない。
C 壊血病、皮下出血 過剰症は認められていない。

ビタミンは、欠乏症の種類は非常に多いですが、過剰症は少ないです。

多くのビタミンでは、過剰症が認められていないので、サプリメントでビタミンを摂取していて不調が出た場合には、その原因を特定しやすいと思います。

一方の欠乏症は、種類が多すぎて、どのビタミンが不足しているのかを特定するのが難しいと思います。例えば、脱毛は、B₂、パントテン酸、ビオチンで認められる欠乏症ですし、皮膚炎も、多くの種類のビタミンの欠乏症です。だから、ビタミンの欠乏症と思われる症状が出た時には、マルチビタミンのサプリメントを使用して、全てのビタミンをまとめて摂取するなどの工夫が必要になります。

ビタミンをしっかりと補給しても症状が変わらない場合は、病院に行って診てもらうしかないでしょうね。

ミネラルの欠乏症と過剰症

次にミネラルの欠乏症と過剰症です。こちらも、『カラー図解 栄養学の基本がわかる事典』を参考にまとめました。

ミネラル 欠乏症 過剰症
ナトリウム 血圧低下、脱水症、低ナトリウム血症 高血圧、口渇、浮腫、腎障害
塩素 消化不良、胃酸分泌低下 過剰症は認められていない。
カリウム 疲労の持続、低カリウム血症、筋力低下、心肺機能の低下 腎機能低下時の高カリウム血症
カルシウム 骨軟化症、骨粗しょう症、発育不全、テタニー(筋肉の硬直やけいれん) 異所性沈着(軟組織沈着、結石)、ミルク・アルカリ症候群(嘔吐、口渇、倦怠感、食欲不振、便秘)
マグネシウム 神経興奮、不整脈、虚血性心疾患、疲労感、こむら返り、テタニー(筋肉のけいれん)、めまい、イライラ、脂肪便、便秘 下痢、腎機能低下時の高マグネシウム血症
リン 発育不全、骨塩低下 腎機能低下時の高リン血症、骨形成不全、低カルシウム血症
鉄欠乏性貧血、疲労感、発育不全、筋力低下 鉄剤の常用や大量輸血による鉄沈着症
亜鉛 慢性の下痢、成長障害、性腺発育障害、皮膚障害、味覚障害、免疫能低下、精神障害、創傷治癒遅延 過剰症は認められていない。ただし、過剰摂取で銅の吸収阻害。
貧血、白血球・好中球の減少、コレステロール・糖質代謝異常、メンケス病 ウイルソン病、肝硬変、脳障害
マンガン 皮膚炎、軟骨形成不全、骨代謝や糖質・脂質の代謝低下、運動機能低下 肺炎、脳障害
ヨウ素 発育障害、地方病性甲状腺腫、クレチン病、甲状腺機能低下症 甲状腺腫
セレン 心機能不全(ケシャン病)、成長障害、肝臓障害、筋肉異常、関節炎、不妊症、免疫低下 疲労感、焦燥感、脱毛、爪の変形、消化器・神経障害、貧血、嘔吐、心筋梗塞、胃腸障害、腎不全
クロム 耐糖能の低下、運動失調、神経障害、体重減少 過剰症は認められていない。
モリブデン 成長障害、プリン体代謝障害 過剰症は認められていない。
コバルト 悪性貧血 過剰症は認められていない。

ミネラルもビタミンと同じく、欠乏症の種類が多いです。過剰症に関しては、ビタミンよりも多いです。

ミネラルの場合は、欠乏症だけでなく過剰症にも注意しなければなりませんね。

ミネラルの欠乏症は自覚しやすそうですが、過剰症は自覚するのが難しそうな症状もあります。腎機能の低下は自覚できるのでしょうか。

とりあえず、ビタミンもミネラルも、欠乏症と過剰症の種類を調べられるようにしておくことが大事だと思います。サプリメントでビタミンやミネラルを補給していない人は欠乏症の可能性が高くなるでしょう。一方、サプリメントでビタミンとミネラルを摂取している人は過剰症の可能性が高くなるでしょう。

サプリメントを使っている人は、過剰症に気づきやすいと思いますが、サプリメントを使っていない人は欠乏症に気づきにくいと思います。ビタミン不足による脱毛や疲労感なんて、「もう年だな」で済ましてしまいそうです。

なお、ビタミンとミネラルの推奨量や耐容上限量は以下の記事にまとめています。

参考文献