糖尿病の方が、血糖コントロールのために糖質制限をすることは、もはや当たり前となっています。現時点では、糖質摂取量を減らすことが、血糖値を上げない手段として最も効果的と言えます。
糖尿病ネットワークの以下の記事でも、糖質制限ダイエットが糖尿病に良いことが報告されています。ただし、植物性食品を中心とした場合に限られるとなっています。
1万人以上を34年間も追跡調査?
上の記事によると、男女1万人以上の糖尿病発症者を34年間追跡調査したとのこと。
この数字、どう思いますか?
1万人の食事内容を34年間も追跡できるとは思えませんよね。34年前はインターネットを使っている人はほとんどいませんでしたから、毎日の食事内容を報告する手段は、電話か手紙くらいしかありません。そして、その内容は、口頭か文章で伝えるしかないと思います。もちろん毎日の食事の写真も添付することが考えられますが、現像するのに結構なお金がかかってしまいます。
仮に毎日の食事を手紙で報告していたとします。そして、郵便代が1通につき100円だったと仮定しましょう。そうすると、1日あたりの費用は100万円になります。1年で3億6,500万円ですね。それを34年間も行うとなると、124億円もかかります。
これだけのお金を出せるとは思えませんよね。
ということで、記事を読み進めていくと、参加者はアンケート調査に回答しただけと書かれていました。毎日、アンケートに答えていたか疑問に思ったので、原文を読んでみることに。
2年に1回のアンケートなんて信用できるの?
糖尿病ネットワークの記事は、ハーバード公衆衛生大学の以下のページを紹介したものでした。
上のページを読んでいくと、以下の文章が出てきました。
The researchers analyzed 34 years of health data from 7,224 women participating in the Nurses’ Health Study and 2,877 men participating in the Health Professionals Follow-up Study, all of whom developed type 2 diabetes after those studies began. The participants completed questionnaires on lifestyle and medical history every other year, allowing the researchers to assess the compositions of their diets and score them according to intake of animal proteins and fats, vegetable proteins and fats, high-quality carbohydrates, and low-quality carbohydrates.
そして、この文章をみらい翻訳で日本語にすると、以下のようになります。
研究者らは、Nurses’Health Studyに参加した女性7,224人とHealth Professionals Follow-up Studyに参加した男性2,877人の34年間の健康データを分析した。これらの女性はいずれも、研究開始後に2型糖尿病を発症していた。参加者は生活習慣と病歴に関するアンケートに隔年で回答し、研究者は食事の組成を評価し、動物性タンパク質と脂肪、植物性タンパク質と脂肪、高品質炭水化物、低品質炭水化物の摂取量に応じてスコアを付けることができた。
「参加者は生活習慣と病歴に関するアンケートに隔年で回答」となっていますね。2年に1回だけアンケートを取って、参加者の食事内容を把握することができるのでしょうか?
怪しい研究です。
糖質制限の有効性を示したことは評価できる
食事に関する研究は、このようなものが多く、あまり信用できません。
それでも、糖質制限が糖尿病に良いことを報告しているのは、それなりに評価できます。
糖質制限をすれば、血糖値が上がりにくくなることは当たり前なので、今更研究する意味があるのかは疑問ですが、大学院の研究結果なら信頼できると思っている人に糖質制限の有効性を説明するのには使えます。
また、この研究結果では、動物性食品を食べていた人には良い結果が出ていないとなっていますが、下の文章を読むと、穀物を食べていたとなっており、そもそも糖質制限食ではない可能性があります。
Low-carbohydrate diets that emphasized animal products and low-quality carbohydrates, such as potatoes, added sugars, and refined grains, were not significantly associated with lower mortality.
日本語訳はこちら。
動物性食品や、ジャガイモ、添加糖類、精製穀物などの質の低い炭水化物を重視した低炭水化物食は、死亡率の低下と有意に関連していなかった。
京都高雄病院の江部康二先生が推奨する糖質制限食では、「ジャガイモ、添加糖類、精製穀物など」は控えるべき食品になるはずです。著書の『「糖質オフ!」健康法』では、「やむを得ず主食をとるなら、玄米などの未精製穀物を少量」と記載されています。上の研究で、糖尿病に良い結果が出ていなかった参加者は、糖質制限食を実践していなかったのでしょう。
植物性食品でも動物性食品でも、糖質制限をしていれば血糖値が上がりにくくなるので、両者に差はないと考えるのが妥当です。