スポーツ界で言われる運動には糖質が必要という理屈は怪しい

体を動かすときには、アデノシン三リン酸(ATP)と呼ばれるエネルギーを体内で作り出さなければなりません。運動だけでなく、体内の様々な活動にもATPが必要とされますますから、人体では休むことなくATPが作られ続けています。

ATPを作り出すためには、糖質(ブドウ糖)、タンパク質(アミノ酸)、脂質(脂肪酸)のいずれかが必要となりますが、スポーツ界では、なぜか、糖質摂取を最も推奨しています。別に糖質を摂取しなくてもタンパク質や脂質を摂取していればATPを作り出せるのに不思議です。

糖質を摂りすぎても中性脂肪に変わるだけ

人間の体は、グリコーゲンという形でブドウ糖を貯蔵できます。しかし、このグリコーゲンは、肝臓に100グラム、筋肉に300グラム程度しか蓄えられません。そして、肝臓のグリコーゲンは血糖値が下がった時に血糖値を上げるために使われ、筋肉のグリコーゲンは激しい運動をするときにATPの合成に使われます。

そして、すでにグリコーゲンが満タンの状態だと、ブドウ糖は中性脂肪に変わって脂肪組織に蓄えられます。だから、運動前に糖質をたくさん摂取したところで、筋肉のグリコーゲンは満タンの状態にありますから、中性脂肪を増やすだけになります。

でも、スポーツ界では、運動前の糖質摂取が推奨されています。なんか変ですよね。

筋肉のグリコーゲンは勝手に貯蔵される

高強度の運動をすると、筋肉に蓄えたグリコーゲンからATPが合成されますが、その時、グリコーゲンは乳酸に変わります。乳酸は、その後、コリ回路を通って再びブドウ糖となり、筋肉にグリコーゲンとして蓄えられます。

もちろん、運動後に糖質を摂取した方がグリコーゲンの回復は早くなりますが、ブドウ糖は、タンパク質や中性脂肪からも作られるので、これらを食べていれば問題ありません。こうやって、ブドウ糖を体内で作り出すことを糖新生といいます。

マラソンの前にグリコーゲンを満たすために糖質をたくさん食べるカーボローディングという手法がありますが、すでに筋肉にグリコーゲンが蓄えられている状況では、肝臓にグリコーゲンを蓄える程度の意味しかないでしょう。それでも、肝臓にグリコーゲンが蓄えられていれば、血糖値を上げるために筋肉のグリコーゲンが無駄に消費されなくなると思うかもしれませんが、筋肉のグリコーゲンは血糖値の上昇には使えないので、そのような心配をする必要はありません。

むしろ、中性脂肪から大量にATPが合成される状況になっているのに糖質を摂取したら、中性脂肪からのATP合成が止まってしまい非効率です。

なぜか、スポーツ界では、糖質を食べないと筋肉からブドウ糖が作られ、どんどん筋肉が減っていくと言う人が多いです。もちろん、タンパク質と脂質をしっかり食べていれば、そんなことは起こりません。

激しい運動後に筋肉のグリコーゲンをすぐに回復したい場合は、糖質を摂取すれば良いですが、そんなことをする必要があるでしょうか?それよりも、運動で傷んだ筋肉を修復するために、タンパク質を多く摂取した方が良いと思うのですが。