現代の日本では、食の欧米化が生活習慣病の原因だと言われていますよね。そして、食の欧米化の代表的な食事が肉食だと。
だから、肉食は健康に良くないとおっしゃる識者が多いわけですが、この主張に対しては大いに反論したいです。戦後、日本人の食卓に多くの肉や玉子、乳製品が並ぶようになってから体格が良くなってますから、動物性食品が健康にとって悪だと決めつけることに違和感を感じます。
むしろ、現代の人類は肉食の恩恵を受けて進化してきたと言われているのですから、肉が生活習慣病の原因だと決めつけるのはいかがなものでしょうか?
人類は肉を食べて賢くなった
最近、「アフリカで誕生した人類が日本人になるまで」という本を読みました。著者は理学博士の溝口優司先生で、全体的な内容は本のタイトル通り、アフリカにいた日本人の先祖がどのようにして日本にやってきたかといったもので、日本人のルーツを知りたい方なら興味を持って読めると思います。
この本の中で、人類は肉食によって進化してきたと述べている部分があります。そして、粗食に適応した猿人は滅びたとも解説されています。
肉食で進化した人類はアウストラロピテクス。反対に粗食で絶滅した猿人はパラントロプスです。
パラントロプスは、アウストラロピテクスよりも発達した顎と臼歯を持っていました。パラントロプスのような猿人は、乾燥化などの影響で栄養価の高い果実を手に入れれなくなり、硬くて栄養価の低い野生のイネ科植物や根茎などを大量に食べて栄養素を補給していたそうです。栄養価の低い食物から必要なエネルギーを得るためには、1日の多くの時間を食事に費やさなければなりません。
一方のアウストラロピテクスの食事は肉食だったようです。顎の形態、歯の表面の磨り減り具合から分析すると、アウストラロピテクスは肉食だったと推定できるそうです。肉は栄養価が高いので、頻繁に食事をする必要はありません。
この食性の違いが両者の運命を決定します。
肉という栄養価の高い食物を食べるようになった者には、一日中何かを食べ続ける必要がなくなり、時間的な余裕ができたのです。時間的な余裕ができたことで、食べること以外に脳を使うようになり、脳が発達し、彼らは次なる進化の階段を上り始めました。しかし、パラントロプスは、食べることだけに時間を費やしていたために脳が発達せず、おそらくは新たな環境の変化に遭遇したとき、生き延びることができなかったのでしょう。いわば、栄養価の低い”粗食”に完璧なまでに適応してしまったがゆえに、パラントロプスは生存競争に敗れてしまったのです。(31~32ページ)
人類の歴史は飢餓の歴史だったのか?
現代の日本人は、そうそう食事に困ることはありません。
でも、人類の長い歴史で、このような飽食の時代は稀なことだと言われています。人類は飢餓の歴史が長かったから、体も頻回に食事を摂らなくても、どうにかこうにか生きていけるようになっていると聞くことも多いです。
しかし、この説はどうも怪しいですね。
アウストラロピテクスの脳が進化したのは、栄養価の高い肉食を覚えたことで時間に余裕ができたからだとする主張と相反します。
人類の長い歴史の中で飢餓の時代が長かったという発想は、肉食を無視した考え方、あるいは狩猟採集は獲物を得られるかどうか不安定だという考え方が根底にあるのだと思います。でも、人類は肉食を覚えたことで、捕食のために一日中活動しなければならないという境遇から脱し脳が進化したと推測するなら、お腹がすいた時に狩りに出かけて短時間に獲物を捕まえていたはずです。
そうでなければ、脳が発達するための時間的余裕を得られなかったでしょう。
人類の歴史は飢餓の歴史だとする発想は、初期人類が頻回に食事をしていなかったと推測し、炭水化物中心の現代人の食事内容を当てはめているのだと思います。炭水化物中心食は栄養価では肉食にかなり劣りますから、1日に何度も食事をしなければ生きていけないという先入観があるのでしょう。
で、結局何が言いたいのかというと、肉や玉子などの動物性食品中心の食事の方が、健康的に生きていくために必要な栄養素の補給に優れているということです。
粗食が人類を滅ぼす。
どこかで聞いたことのある言葉ですな。