摂取したアミノ酸は体タンパクになる

健康な体を維持するためにタンパク質の摂取が重要なことを多くの人が知っています。

人間の体は、タンパク質でできており、そして、常にタンパク質の入れ替えが行われています。だから、食事からのタンパク質供給が断たれると、体を構成するタンパク質の分解速度が、合成速度を上回り、身体の老化を促進することは容易に想像できますよね。

分解されていく体タンパクを再合成して身体を維持している人間にとって、タンパク質は絶対に欠かせない栄養素なのです。

タンパク質のエネルギー利用

一方でタンパク質は、糖質や脂質と同じくエネルギー産生の材料となります。だから、栄養学では、タンパク質も熱量(カロリー)の計算に含めているわけです。

しかし、摂取したタンパク質が体タンパクの合成の材料になる以上、食べたタンパク質全てがエネルギー産生の材料となることはありません。この辺りが、カロリー理論の怪しいところなんですよね。

でも、人間の体が、タンパク質をエネルギー利用できることはわかっています。だから、食べたタンパク質のどれくらいがエネルギー利用されるのかを知った上で、体タンパクの合成に必要なタンパク質量がどれくらいになるのかを計算しなければなりません。

これについては、分子栄養学の専門家の三石巌先生の著書「高タンパク健康法」の以下の記述が参考になると思います。

放射性窒素で標識を付けたアミノ酸を持つタンパク質を摂取させる実験で分かったことだが、すべてのアミノ酸は例外なしに体タンパクになる。これを、ゲームの強行に例えたわけだ。仮に、摂取したタンパク質にリジンがゼロならば、そこの組織を壊してリジンを取り出し、そのリジンを使って、新しく体タンパクを合成する。プロテインスコアの低いタンパク質は、異化を促進する。結局そこには、無駄な代謝があるわけだ。(73ページ)

すべてのアミノ酸は例外なしに体タンパクになる」という部分を読めばわかるように食べたタンパク質(アミノ酸)は、エネルギー利用されるのではなく体作りに使われると考えられます。

そして、最後の方の「プロテインスコアの低いタンパク質は、異化を促進する」という部分を読めば、エネルギー利用されるタンパク質は、現在の体を構成するタンパク質を壊して得たアミノ酸であると考えられますね。

プロテインスコアの高いタンパク質摂取が大事

ここで、プロテインスコアという言葉が出てきました。プロテインスコアは、簡単に言うと食べ物に含まれるタンパク質の良質度の指標です。

以下の記事で紹介していますが、プロテインスコアが最も高い食品は卵で、プロテインスコアは100点です。

タンパク質は、20種類のアミノ酸で作られていますが、人間はそのうち9種類のアミノ酸を体内で合成できません。この9種類のアミノ酸を必須アミノ酸といいます。プロテインスコアとは、この必須アミノ酸のバランスを示したものなんですね。

もしも、9種類の必須アミノ酸のうち、1種類が不足していたとします。この場合、すでにある組織を壊して不足した必須アミノ酸を取り出し、新たな体タンパクの合成を行います。そうすると、壊された組織を構成するその他のアミノ酸は、体タンパクの再合成には使われず、捨てられるかエネルギー利用されるかのどちらかとなるのでしょう。

こう考えると、普段の食事では、プロテインスコアの高い食品を優先的に食べて必須アミノ酸の不足を防がなければならないことがわかります。また、食べるタンパク質量もそれなりに多くなければならないでしょう。体重1kgにつき1gのタンパク質補給が目安とされていますが、プロテインスコアが100点でないタンパク質も普通は食べますから、この程度のタンパク質摂取量では必須アミノ酸が不足する危険があると思います。

そうすると、1日のタンパク質摂取量は体重1kgにつき1gを超える量は必要となるでしょう。ボディビルダーの方は、体重1kgにつき2gのタンパク質を摂取していると言われています。運動をしていない人でも、これくらいを目安にタンパク質を摂取するのが望ましいかもしれませんね。

かつては、タンパク質の食べ過ぎは腎臓を壊すと言われていましたが、それは迷信です。腎症を患っていなければ、タンパク質摂取量が多くなることを気にする必要はありません。

摂取したタンパク質は、すべて体タンパクの合成に使われると述べましたが、これだとアミノ酸プールの考え方と矛盾するんですよね。

アミノ酸プールについては以下の記事で説明していますが、簡単に言うと体タンパクを分解したアミノ酸と摂取したアミノ酸をごちゃ混ぜにして体タンパクの再合成を行う仕組みのことです。

アミノ酸プールを前提にすれば、必ずしも、摂取したアミノ酸がすべて体タンパクの合成に使われるとは言えなくなりますね。

とりあえず、プロテインスコアの高いタンパク質を優先的にたくさん食べるようにすれば、必須アミノ酸不足は予防できるでしょう。

参考文献