先ごろ、無形文化遺産に登録された和食ですが、登録の理由には健康的な食事だというものがありましたよね。
でも、私は、和食が健康的な食事だということに疑問を感じています。その理由は、様々ありますが、特におかしいと感じるのは、和食を食べていた日本人の寿命が昔は50年程度であったり、体格が西洋人に比べて小さかったということです。
本当に和食が健康的なら、食の欧米化が進んでいる現代よりも、昔の日本人の方が長生きしていないとおかしいと思いませんか?
日本食が健康寿命を延ばした証拠はない
傷の湿潤治療で有名な夏井睦先生のホームページを見ていると、興味深い論文が紹介されていました。その論文は、鶴見大学の花田信弘先生の「主食による歯の喪失」というもので、PDFをダウンロードできます。
ここでいう主食というのは、日本人が好んで食している米などの炭水化物を中心としたものです。以下に上記論文の一部を引用します。
一般に日本食は健康食だと信じられているが、 コメなどの炭水化物を主食とする日本食が日本人 の平均寿命や健康寿命の延伸に貢献したという科学的根拠は乏しい。伝統的な日本食を食べていたと考えられる鎌倉時代や江戸時代の日本人が長寿であったという根拠もなく、主食の概念を持つ日本食を健康食だと見なすことは困難である。主食重視は理想の食事ではない。主食重視から主菜と副菜の重視に転換するにつれてコメの消費量は減少するが、それにつれて、平均寿命が延伸している
この文章とともに日本人の平均寿命のグラフが掲載されているのですが、これを見れば明らかなように米の消費量の減少とともに日本人の寿命が延びています。つまり、米の消費量と日本人の平均寿命とは、負の相関関係があるということです。
寿命に与える影響は、上下水道の発達、乳幼児の死亡率の低下、医療の発達など、様々な要素があります。でも、和食が寿命を延ばすというのなら、こういった要素を抜きにしても、食の欧米化が進んでいる現代人の寿命が縮んでいなければおかしいですよね。
そもそも花田先生は、鎌倉時代や江戸時代の日本人が長寿であったという根拠がないと述べているので、昔から日本食が健康食だったというのは難しいでしょう。
源平合戦の勝敗を決めたのは肉食
平安時代末期の源氏と平家の戦いは、源氏の勝利で終わりました。
勝敗を決めた要因のひとつに両者の体格差があったと言われています。これは、樋口清之さんの「逆・日本史1巻」に記述があります。平家は、政権をとってからは貴族と同じ食事をしていましたが、源氏は、関東の野山を駈け廻り、獣肉を中心に動物性たんぱく質をたくさん摂取していたので、筋肉隆々だったのです。
この頃の公家の食事は、食べる料理よりも見る料理が多く、干物の魚介が動物蛋白の中心となり、仏教の殺生戒から獣肉を食べることはほとんどなかった。(中略)そのうえ、宴遊と濁酒の飲楽にあけくれ、運動不足と慢性胃弱、糖過多に陥り、平家一門の体格を下げる条件がそろっていた。結果として消費的、依存的な精神生活を送っていたことになる。(中略)
そこへいくと、源氏は関東の田舎侍だけあって、日常から武技を練り、狩猟をさかんに行い、その獲物は食膳に自由にのぼっていた。これは魚介の干物とは比較にならないほど新鮮な動物淡白の摂取法である。(32ページ)
平家一門の食事内容は、現代人の食生活に近いのではないでしょうか?
さらに読んでいくと、平家のような食生活は精神的にも不安定にし、源氏の食生活は健康な精神状態を作っていたと推測できるといったことが述べられています。
引用した文章の中には、糖過多といった記述も見られるので、炭水化物中心の食生活が、平家一門を肉体的にも精神的にも病的にしていったのではないでしょうか?
このように歴史的な視点からも、和食が健康的だとは言えません。特に炭水化物(糖質)まみれの食生活は、健康とは対極にあるように思いますね。
和食が健康食だということを喧伝していると、そのうち、海外から痛烈な批判を浴びることになりそうです。