タンパク質摂取が血糖値を上げると言うけど実は下げてるんじゃないの?

血糖値を直接上げるのは糖質(炭水化物)だけです。だから、高血糖が気になりだしたら糖質制限をするのが基本だと言われれば、すぐに納得できます。中には、感情的に反論する人もいますが。

それはさておき、タンパク質を食べた場合も、血糖値を上げるグルカゴンというホルモンがすい臓のα細胞から分泌されるので、間接的に血糖値が上がります。だから、タンパク質を食べても血糖値が上がると言われています。

でも、タンパク質を摂取すると、血糖値を下げるインスリンというホルモンもすい臓のβ細胞から分泌されます。だから、インスリン分泌に着目すると、タンパク質摂取は血糖値を下げるとも言えるはずです。

タンパク質摂取で血糖値は大きく動かない

それなら、タンパク質摂取で血糖値が上がるか下がるかを実験すれば簡単に結論が出ます。

実際に神経内科医のたがしゅう先生が、ご自身と知人のAさんの血糖値がタンパク質摂取でどのように動いたかを計測されています。その結果は以下のブログ記事に掲載されています。

ご覧になっていただければわかりますが、お二人の血糖値は、タンパク質摂取前と摂取後で大した変動を見せていません。したがって、タンパク質摂取では、通常、血糖値は大きく動かないと解釈できます。2人のサンプルじゃ少なすぎると言えばその通りですが、そもそも、たがしゅう先生が実験する以前にすでにタンパク質を食べても血糖値に大きな変動を与えないことはわかっていたことです。たがしゅう先生は、そう言われていることが本当かどうかを自ら調べて確かめてくれたんですね。

インスリン分泌が主だと思うんだけど

タンパク質摂取で、インスリンとグルカゴンが同時に分泌されるのはおもしろいですね。一方では血糖値を下げようとし、一方では血糖値を上げようとしているのですから。そんな面倒なことするくらいなら、最初からタンパク質摂取でインスリンもグルカゴンも分泌されない仕組みにしておけば良いのに。

これは、自動車で例えると、ブレーキ(インスリン)とアクセル(グルカゴン)を同時に踏んで、速度を一定に保ちながら走行している状態と同じですよね。そんなことしたら、車のエンジンがおかしくなりそうな気がするのですが。

こんなことを私が考えるようになったのは、哺乳類の胎児に糖質(グルコース/ブドウ糖)を投与してもインスリンが分泌されないということを知ったからです。ラットの実験なので人間にも当てはまるのかはわかりませんが。

そもそも、哺乳類はタンパク質を摂取した時にインスリンが分泌される設計だったとしたら、それはちょっと困りものなのです。なぜなら、タンパク質を摂取するたびにインスリンの作用で血糖値が下がり、低血糖を起こしてしまうからです。低血糖はとても危険な状態なので、タンパク質摂取は命がけの儀式と言わざるを得ません。

しかし、タンパク質摂取で血糖値が下がっても、それに気づいたすい臓のα細胞が、速やかにグルカゴンを分泌すれば、低血糖に陥らず血糖値を食前と同じ水準に維持できます。

なので、タンパク質摂取は血糖値を下げるけども、グルカゴンのおかげで低血糖にならないのだと思うんですよね。つまり、タンパク質摂取で血糖値が上がるのが先ではなく、タンパク質摂取で血糖値が下がるのが先じゃないかと思うのです。

これが本当なら、先のたがしゅう先生の実験では、インスリン分泌が先、グルカゴン分泌が後となっているはずなのですが、実際にはどちらもタンパク質摂取後に分泌されるまでの時間はほぼ同じです。ただ、グルカゴンの分泌時間の方が長いみたいですから、この辺りに何か秘密があるのかもしれません。

インスリンとグルカゴンのどちらが先かがわかったところで、血糖値に変化がないのなら考えても意味がないですね。でも、糖尿病の方は、タンパク質摂取でも血糖値が上がる場合があるので注意が必要です。糖尿病の方はβ細胞が弱って、インスリン分泌が減っているので、どうしてもグルカゴンに負けてしまうのでしょう。ブレーキは弱くなってるけどアクセルは正常な自動車といったところでしょうか。

それなら、α細胞もインスリン分泌量に合わせてグルカゴンを分泌してくれれば良いのですが。

長い食習慣が、α細胞をパブロフの犬状態にしてしまって、タンパク質が体内に入ってくると無条件にグルカゴンを分泌するようになっているのでしょうか?パブロフの犬は、食事の前にベルを鳴らし続けていると、エサをあげなくてもベルを鳴らせばよだれを垂らすようになるという、あれね。

これ以上考えても、鶏が先か卵が先かと同じ議論になりそうなので、この辺でやめておきます。