世の中には、糖質制限批判が数多くあります。
糖質制限をすると糖尿病になるとか。
糖質を摂取しなければ血糖値が上がらないのになぜ糖尿病になるのか、言っている意味が分かりません。でも、糖質制限批判者の中には、糖質制限をすると糖尿病になると言う人がいます。
どうも、彼らは糖質制限をすると、血糖値を下げるインスリンを分泌するすい臓のβ細胞が機能を失うと思っているようです。
糖質摂取以外ではインスリンが分泌されないと思い込んでいる
糖尿病は、上がった血糖値を下げられなくなる病気です。
糖質を摂取すると、ブドウ糖が血管の中に入り血糖値が上がります。すると、β細胞からインスリンが分泌され、血糖(ブドウ糖)は筋肉や脂肪組織に取り込まれ、血糖値が下がります。
しかし、肥満している人は、脂肪組織がもうこれ以上血糖を取り込めなくなって血糖値を下げられなくなるインスリン抵抗性を惹き起こすことがあります。また、上がった血糖値を下げるために頻繁にインスリンを分泌していると、β細胞が弱ってインスリンの分泌量が減ってしまうインスリン分泌不全にもなります。
どちらも、糖尿病と呼ばれる状態ですが、怖いのはインスリン分泌不全です。
インスリン抵抗性は痩せれば改善できますが、β細胞は壊れると回復しないとされています。そのため、インスリン分泌不全は改善できないと言われているんですね。
インスリン分泌不全が、β細胞を酷使することで起こるのですから、できるだけインスリンを分泌させないことが大切です。そのため、インスリンを大量分泌することになる米、パン、麺類など炭水化物(糖質)が多く含まれる食品を食べないようにする糖質制限食が、糖尿病の予防や糖尿病の悪化を防ぐのに有効だと言われているのです。
ところが、糖質制限批判者は真逆のことを言います。
人間の機能は、使わなければ退化するので、どんどん使う必要があると。だから、糖質制限は、β細胞がインスリンを分泌するのを妨げるので、その機能を失い廃用性萎縮するのだと。
しかし、この理屈は間違っています。
なぜなら、糖質を摂取しなくてもインスリンは分泌されるからです。
インスリン基礎分泌
まず、インスリンは常に分泌されていることを知らなければなりません。
すい臓のランゲルハンス島にはβ細胞の他に血糖値を上げるグルカゴンを分泌するα細胞とインスリンとグルカゴンの分泌を抑制するソマトスタチンを分泌するδ細胞(デルタ細胞/d細胞)もあります。
これら3種類のホルモンがすい臓から分泌され、血糖値は一定の水準に保たれているのです。
そして、インスリンは常に少量が分泌されて、血糖値が上がり過ぎないようにしています。これをインスリン基礎分泌と言います。
さらに人間には、各種ホルモンの分泌のピーク時刻があり、それにより時の経過を知ることができます。これを概日周期(サーカディアンリズム)と言います。インスリンは午後5時に分泌のピーク時刻を迎えるとされています。別に糖質を摂取しなくても、インスリンは分泌されるわけですね。
タンパク質摂取でもインスリンは分泌される
また、タンパク質を摂取した場合も、β細胞からインスリンは分泌されます。
こんなことは生理学の初歩的な知識なのですが、糖質制限批判者は、糖質を摂取しなければインスリンが分泌されないと思っているようです。だから、糖質制限をするとβ細胞が廃用性萎縮すると言いだすんですね。
もしも、彼らの言っていることが正しいのなら、毎日、米やパンなど糖質を多く含む食事をしていると、血糖値を上げる必要がなくなるのでグルカゴンを分泌するα細胞が廃用性萎縮するはずです。しかし、そんなことは起こっていません。もしも、高糖質食でα細胞が廃用性萎縮するのなら、多くの人がα細胞の機能を失っているでしょう。
他にも、糖質制限をしているとα細胞が血糖値を上げるためにグルカゴンを大量に分泌して、逆に高血糖となり、糖尿病を発症すると言う人もいます。
なんで?
先ほども述べましたが、すい臓のランゲルハンス島には、インスリンとグルカゴンの分泌量を調節するソマトスタチンを分泌するδ細胞があるのですから、α細胞がグルカゴンを出しまくることはないと、普通はわかるでしょうに。
糖質制限を批判する人は、以前よりも減っていますが、それでもまだまだ多いですね。
もっともらしいことを言ったり、専門用語を並べたりして、糖質制限を批判されると、それが正しいように思えてきます。でも、生理学や生化学の入門レベルの知識があれば、「なんかおかしいぞ」と気付きます。
情報化社会が進展すると、多くの情報が入ってくるので、何が正しくて何が間違っているのか判断するのが難しくなります。情報化社会になると情報を探す手間が省けると思っていましたが、以前よりも勉強しなければならなくなったので、逆に時間がなくなっています。
なんか、おかしいですね。