フランス人は、飽和脂肪酸を多く含む肉類ばかり食べているのに他国の人より動脈硬化になる人が少ないとされています。
その理由として考えられたのが、フランス人は、抗酸化作用のあるポリフェノールが多く含まれている赤ワインを他国の人よりたくさん飲んでいるからという説です。この飽和脂肪酸をたくさん摂取しているのにポリフェノールを多く摂取しているフランス人が動脈硬化になりにくいことをフレンチパラドックスといいます。
「そうか、だったら、たくさん肉を食べても、その分多くの赤ワインを飲めば動脈硬化にならないんだ」と思ってしまいますが、そもそも、このフレンチパラドックスなるものが非常に怪しい理論なので、無条件に受け入れてはいけません。
飽和脂肪酸を多く摂取したら動脈硬化になるわけではない
フレンチパラドックスの前提となっているのは、飽和脂肪酸が健康に悪いという考え方です。
飽和脂肪酸を摂取すると動脈硬化になって、心筋梗塞や脳梗塞になりやすいと言われていますが、そもそも飽和脂肪酸が健康に悪いと結論付けた研究内容が怪しいものです。それについては、以下の記事で紹介しています。
上の記事にも書きましたが、日本での研究では、飽和脂肪酸を多く摂取している人の方が脳卒中になりにくいとの結果が出ています。
飽和脂肪酸が、体の中でどのようにして動脈硬化を惹き起こすのかという働きを調べず、統計的に飽和脂肪酸の摂取量が多い人ほど動脈硬化になっているとする相関関係だけで導かれたのが、飽和脂肪酸害悪説なんですね。
ポリフェノールが多く含まれている赤ワインをフランス人はたくさん飲んでいるとする相関関係から導かれたフレンチパラドックスも、飽和脂肪酸害悪説と一緒です。
どちらも非常に怪しい説です。
仏衛生機関が否定
ニッポン消費者新聞の2021年6月11日の「仏衛生機関、『適量の赤ワインは健康に良い』説を否定」の記事では、仏国立衛生医学研究所が、フレンチパラドックスを否定する報告を行っていると記されています。
それによると、ワインに含まれるポリフェノールの抗酸化作用は細胞レベルでは認められていますが、こうした研究はワインに含まれる量と比べて天文学的な量で行われているとのこと。そして、赤ワインを飲んでポリフェノールを摂取するメリットよりも、アルコールを体内で処分する時に発生するアセトアルデヒドの害の方が大きいとしています。
さらに以下のことも述べられています。
「適量の飲酒が、まったく飲酒しないことよりも健康に良い」のではなく、「適量の飲酒は、過度な飲酒よりもリスクが低くなる」のが正しい解釈だと強調。休肝日をはさみながら1日2杯以下、1週間に10杯以下に抑えて健康を維持するよう呼びかけている。
酒は百薬の長なんて言われていますけど、それも怪しいですね。アルコールを摂取しない方が健康的でしょう。
フレンチパラドックスを信じて、赤ワインをたくさん飲むべきではないですね。