数年前に糖質制限をすると耐糖能が悪化し糖尿病になるという噂が流れました。
もちろん、デマですよ。
彼らが、そのようなデマを流したり、また、デマを信じたりしたのは、単に生理学の基礎知識がなかっただけです。初心者向けの生理学の本に書いてあることなんですけどね。
糖質制限中は糖利用が抑制される
シミズ先生のブログの以下の記事では、糖質過剰摂取をしたグループと糖質制限をしたグループで、ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行った実験の結果が紹介されています。
OGTT後の血糖値の上昇は、糖質制限をしたグループの方が高くなっており、これだけを見ると、糖尿病のように見えます。しかし、インスリンの分泌量は、糖質過剰摂取をしたグループと大差ありません。したがって、糖質制限をしても、すい臓のβ細胞がインスリンを分泌する能力を失っていないことがわかります。
では、インスリン分泌量に問題ないのに糖質制限をしたグループは、なぜ、血糖値が上がるのでしょうか?
それも、上記記事に書いてありますが、筋肉などの末梢組織は、ブドウ糖と脂肪酸のいずれかを選択してエネルギー利用しているからです。糖質制限をすると、ホルモン感受性リパーゼの働きが活発になり、中性脂肪の分解が進み、血中の遊離脂肪酸濃度が高くなります。
遊離脂肪酸は、各組織に運ばれてエネルギーとして消費されます。糖質制限をして、体に蓄えた中性脂肪が減っていくのは、こういう仕組みになっているからです。
遊離脂肪酸濃度が高い時、血中のブドウ糖濃度は低くなっており、末梢組織では、脂肪酸のエネルギー利用が進みます。普通に考えたら、そうならないと困りますよね?
血糖値が下がっている状況でも、ブドウ糖のエネルギー利用が進めば、低血糖になってしまいます。ブドウ糖でも脂肪酸でも、とちらからでもエネルギーを作れる組織は、ブドウ糖を節約して脂肪酸をエネルギー利用する方が低血糖を避けられるのですから。
糖質制限をしてもβ細胞は委縮しない
筋肉は使わなければ衰えます。
同じことが、インスリンを分泌するすい臓のβ細胞にも言えるのでしょうか?
答えはわかりませんが、糖質制限をしても、すい臓は血糖値を調節するためにインスリンを少量分泌していますから、β細胞が全く働かない状態を作ることはできません。だから、糖質制限をしたら、使わなくなったβ細胞が委縮するというのはウソです。
こういうデマを平気で流す人が世の中にはいて、以前に以下の記事を書いたときには、フェイスブックで、オカルトな方々が騒いでいました。
自分の無知をかえりみず、何を言っているんでしょうね。生理学の本から引用した内容を紹介しているのにそれを否定しようとするなんて。そして、こういう人たちは、すぐにデマに引っ掛かります。筋トレしたら糖尿病が治るとか。普通は、そっちを先に疑うでしょうに。
シミズ先生が紹介された実験を見ても、糖質制限をしてβ細胞が委縮したとは見えません。
筋トレ後にブドウ糖を摂取することを推奨している人もいますが、それもやめましょう。筋トレでグリコーゲンが消費されても、筋トレ後に溜まった乳酸がコリ回路を通って、再びグリコーゲンとなり筋肉に貯蔵されるのを待てば良いのです。
糖尿病の人がOGTTを受けるのは危険なのですから、糖尿病の人が筋トレ後にブドウ糖を摂取するのも控えるべきでしょう。