食物に含まれる脂質と身体に蓄えた中性脂肪のカロリーは同じなの?

ダイエットにとって大切なのはカロリーの計算だと言われていますよね。

食物に含まれている糖質、脂質、タンパク質から、人体はエネルギーを作り出すことができ、それぞれが持つ1グラム当たりの熱量は以下となっています。

  • 糖質=4kcal
  • 脂質=9kcal
  • タンパク質=4kcal

これらの値は、アトウォーター係数と呼ばれ、物理的燃焼値とは異なります。例えば、脂質の物理的燃焼値は、9.45kcalであり、アトウォーター係数よりも0.45kcal多くなっています。それなのに食物に含まれる脂質と身体に蓄えている中性脂肪を同じ9kcalとして計算して良いのでしょうか?

アトウォーター係数は消化吸収率と燃焼率を考慮した値

アトウォーター係数が、物理的燃焼値よりも低くなっているのは、食べ物の消化吸収率と体内での燃焼率を考慮したからとされています。

口から入った食べ物は、全て体内に吸収されませんから、食べた脂質が100グラムだったとしても、体内に吸収される脂質はそれより少なくなります。また、体内に蓄えている中性脂肪が100グラムあっても、完全に燃焼させられないので、物理的燃焼値と同じエネルギーを取り出すことはできません。

だから、食べた食物に含まれている脂質が100グラムであっても、実際にエネルギーとして使われるのは、95.24グラムであり、その時の消費カロリーは900kcalになる計算です。

  • エネルギーとして使われる脂質の量
    =100グラム×9kcal/9.45kcal
    =95.24グラム
  • 脂質100グラム当たりのカロリー
    =95.24グラム×9.45kcal
    =900kcal

では、体内に蓄えている中性脂肪100グラムを燃焼した場合、どれだけの熱量(カロリー)となるでしょうか?

食物に含まれる脂質100グラムと同じ熱量にはなりませんよね。だって、体内に蓄えている中性脂肪は、食物に含まれている脂質から消化吸収できなかった脂質を差し引いた量なのですから。

そうすると、体内に蓄えた中性脂肪1グラムを燃焼した時にどれだけの熱量が発生するかを計算するのにアトウォーター係数9kcalを用いることはできません。それなら、物理的燃焼値9.45kcalを使えば良いではないかと思うでしょうが、こちらは、脂質を完全燃焼した時の熱量ですから、中性脂肪を完全燃焼できない人体に物理的燃焼値は適用できません

カロリーなんて計算できない

こうやって考えてみると、カロリーなんて計算できないと思いますよね。

実際そうですよ。

以下の記事でも説明しましたが、カロリー計算なんていい加減なんです。

また、以前に糖質と脂質についてATP(アデノシン三リン酸)とカロリーを計算したことがありますが、どちらもアトウォーター係数と同じような値にはなりませんでした。

さらにタンパク質については、20種類のアミノ酸で構成されていますが、それぞれのアミノ酸は、クエン酸回路に合流する入り口が異なっているので、同じ1グラムであっても、取り出せるATP量に差があるはずです。

こうやって、人体がどのようにしてエネルギーを作り出しているのかを調べていくと、アトウォーター係数が役に立つ代物ではないと気づきます。食べすぎかどうかをざっくりと知る手掛かりにはなりますが、正確性に欠けます。別にカロリー計算しなくても、糖質、脂質、タンパク質を食べた量だけ見ていても、食べすぎかどうかの目安になります。

ダイエットのためにカロリー計算をしたところで、アトウォーター係数自体が使い物にならないのですから、大した意味はないですよ。

参考文献