筋力アップには肉食が効果的だけど大腸がんが心配?

筋トレをしている人の目的は、何と言っても筋力アップ。スロートレーニングをしている方なら、これにダイエットという目的も加わる場合があるでしょうね。

私がスロトレをしている目的は、筋力アップです。もちろん、余分な脂肪が体につかないようにという目的もあるのですが。

筋力アップのためには、トレーニングは大事ですが、それと同じくらい重要となるのが、タンパク質と脂質の補給です。特に肉食は、筋肉をつけるのに有効な食事なので、筋トレをしている人は、積極的に肉を食べておきたいですね。

でも、肉食は大腸がんになると言われています。筋力アップのために肉をたくさん食べたはいいけど、大腸がんになったのでは困りものです。

なぜ大腸がんになるのか?

大腸がんの原因とされるのが、食の欧米化です。食の欧米化というのは、簡単に言うと肉食ですね。では、なぜ、肉食が大腸がんの原因となるのでしょうか?

先日、ある健康番組を見ていると、以下のように解説されていましたので、簡単に紹介しておきます。

肉を食べると動物性脂肪をたくさん摂取することになります。

脂肪が体に入ると、胆のうから胆汁酸がたくさん分泌されます。胆汁酸は、小腸で再吸収されるのですが、一部は大腸に流れて行ってしまい、腸内細菌がそれを分解して、デオキシコール酸やリトコール酸と呼ばれる二次胆汁酸を作り出します。

この二次胆汁酸が、大腸がんを発生させやすくするそうです。

だから、肉食を控えることが大腸がんの予防に有効だと言われているんですね。

また、大腸に二次胆汁酸が滞留している状況が続くのも、大腸がんの原因となるので、速やかに排泄する必要があります。だから、食物繊維をしっかりと補給して、便通を良くしておけば、大腸がんの予防に良いということです。

同じ内容を解説したブログやサイトが、ウェブ上にたくさんありますので、検索すればすぐに調べることができます。気になる方は、「大腸がん 胆汁酸」で検索してください。

肉食動物はなぜ大腸がんにならないの?

その健康番組を見た私の感想は、「いい加減な情報を流しているな」というものです。

肉食が大腸がんの原因になるのなら、ライオン、トラ、ヒョウ、チーター、猫といった肉食動物の多くは、大腸がんで死ぬはずです。でも、肉食動物が大腸がんで死ぬなんて聞いたことありません。自分が知らないだけかと思って、検索したのですが、肉食動物と大腸がんの関係を説明しているものは見つかりませんでした。

しかも、彼らは、食物繊維だって、ほとんど摂取していません。食物繊維を摂らないと便秘になって胆汁酸が大腸に蓄積するというのなら、肉食動物は日々便秘に悩まされ、大腸の中は二次胆汁酸でダメージを受けてできた腫瘍がたくさんあるはずです。

同じ肉食動物の人間が大腸がんを発症しやすいのは、他に原因があると考えるのが普通だと思うのですが。

便秘も肉食も食物繊維も大腸がんと無関係

便秘がちな人は、大腸がんになりやすいという噂がありますが、作家の五木寛之さんと医師の帯津良一先生の対談集「健康問答」で、それを否定する情報が載っています。

五木 便秘というと、反射的に大腸ガンと結びつけてしまいますが、最近、衝撃的な記事が新聞に載りました。大腸ガンと便秘との因果関係はなかったという発表が、厚生労働省の研究班から出されたんです。
六万人を対象にした、疫学調査の結果ということですが、これには驚きました。(中略)
帯津 便秘と大腸ガンの関連性を求めた研究論文が、どのくらいあるか知りませんが、便秘の人が大腸ガンになりやすいというのは、定説にはなっておりませんね。(113ページ)

便秘がちな人が大腸がんになりやすいというのは、単なる噂であって、過去においても何の根拠もなかったんですね。

また、肉食も大腸ガンと関係ないことを医師の釜池豊明先生が、著書の「糖質ゼロの食事術」の中で述べています。

昨年六月、東北大学のグループが、肉の消費と大腸・直腸ガンのリスクに関して宮城県で行った疫学研究をヨーロッパの雑誌(Eur J Cancer Prev)に発表しています。
彼らの結論は、肉の消費が大腸・直腸ガンの危険因子である、とする説を否定するものでした。(222ページ)

「糖質ゼロの食事術」は、2007年に出版されているので、昨年6月とは2006年のことです。すでにこの頃から肉食と大腸ガンの関係は否定されているのにいつまでも間違った情報が流され続けているんですね。

さらに釜池先生は同書の中で、食物繊維と大腸がんの関係も否定しています。

「食物繊維を十分に摂らないと大腸ガンになる」という説があります。
これも根拠のない俗説です。
昨年四月、国立がんセンターのグループが、食物繊維摂取と大腸・直腸ガンの関連についての疫学研究を国際学術誌(Int J Cnancer)に発表しています。
彼らの研究結果は、「食物繊維摂取には、容量依存性に大腸・直腸ガンに対する防御的効果がある」という仮説を支持しなかったのです。(222ページ)

肉食が大腸がんの原因だという説は、便秘や食物繊維とつながっていますよね。

「肉は体に悪く便秘になりやすい。便秘になると、腸の中に健康に悪いものが滞留し続ける。だから、食物繊維をたくさん摂取して排便を促さなければならない」

こういう理屈で食物繊維の重要性を訴えているのでしょうが、食物繊維は大腸がん予防にならないし、便秘と大腸ガンとの因果関係もありません。そうなると、二次胆汁酸が大腸に溜まると危険だというのも、なんだか怪しくなってきます。

仮に二次胆汁酸が大腸がんに大きくかかわっているとしても、それを速やかに外に出せれば問題ないのですから、肉食で、その発生量が増えても排便が良好なら問題ないはずです。でも、便秘と大腸ガンとの間に因果関係がない以上、やっぱり辻褄が合わないと思うのですが。

結局、肉食で大腸がんのリスクが高まるということはないようですから、筋トレをして筋肉をつけたいと思っている方が、人よりたくさん肉を食べても問題ないでしょう。

参考文献